なぜ理学療法士は人間関係で消耗しやすいのか?現場のリアル5選
「また同僚と少しギクシャクしてしまった…」
「上司の言葉が引っかかって、帰宅してからも頭から離れない」
理学療法士として働いていると、患者さんのリハビリや技術の勉強だけではなく、
職場での人間関係が日々のストレスの大きな割合を占めることに気づきます。
それは決してあなたの性格が悪いわけでも、コミュニケーション能力が低いわけでもありません。
実は、理学療法士という職業の構造や働き方そのものが、人間関係の摩擦を生みやすい環境をつくっているのです。
私自身、病院・クリニック・施設・訪問リハと、さまざまな職場を経験してきましたが、
どこに行っても耳にするのは「〇〇さんと合わない」「チームの雰囲気が重い」という声でした。
そして、この人間関係の消耗は、仕事のやる気やパフォーマンスだけでなく、
キャリアの選択や将来への希望にも大きな影響を与えます。
この記事では、私が現場で見聞きしてきた経験をもとに、
なぜ理学療法士は人間関係で消耗しやすいのかを、
5つのリアルな理由に分けて解説します。
- 「自分だけがつらいのでは?」という不安を解消
- 問題を整理して、冷静に対処できるようになる
- さらに改善の一歩を踏み出せる
そんなきっかけになればと思います。
ではまず、人間関係の摩擦が生まれる背景から見ていきましょう。
理学療法士が人間関係に悩みやすい3つの構造的理由

「なんで理学療法士って、こんなに人間関係のストレスが多いんだろう?」
そう感じたことはありませんか?
技術や知識は努力で身につけられるのに、
職場の雰囲気や人間関係だけは、自分ひとりの頑張りでは変えられない──そんな無力感を抱く瞬間、ありますよね。
実はそれ、あなただけの問題ではありません。
理学療法士という職業は、そもそも人間関係の摩擦が生まれやすい構造を持っています。
「性格が合わない」とか「偶然の相性」だけでなく、
業務環境・職場文化・評価の仕組みなど、職業そのものが抱える特徴が関係しているのです。
だからこそ、原因を構造的に理解することが大切です。
そうすれば、「自分だけが悪い」という過度な自己否定から抜け出し、冷静に対処の選択肢を考えられるようになります。
ここからは、私がこれまで複数の病院・施設・訪問リハの現場で経験してきたこと、
同僚や後輩たちの相談から見えてきた傾向をもとに、
理学療法士が人間関係で消耗しやすい3つの構造的理由を解説していきます。
1. 閉鎖的で固定メンバーの職場環境
理学療法士の多くは、同じ部署・同じ顔ぶれで長期間働くことが多いです。
病院や施設では人事異動がほとんどなく、同じ同僚や上司と何年も同じ空間で働き続けます。
一度関係がこじれると、異動で距離を取ることも難しく、毎日顔を合わせながら気まずい空気を抱えたまま過ごさなければなりません。
しかも、リハビリ室は物理的にも閉鎖的です。
広い病棟と違い、限られた空間で、患者対応や記録作業も含めて一日中同じ人と視界を共有する状況が続きます。
- 「仕事以外の雑談も聞こえてしまう」
- 「少し機嫌が悪いのもすぐ分かる」
- 「自分だけ浮いている気がする」

こうした環境は、些細な誤解や感情のすれ違いを大きく感じさせ、精神的な疲労を加速させます。
2. チーム連携の多さと意見の衝突
理学療法士の仕事は、患者さんだけを相手にしていれば成立するものではありません。
医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど、多職種との情報共有や方針調整が欠かせません。
しかし、医療職種ごとに価値観や優先順位が異なるため、どうしても意見の衝突が起こります。
例えば…
- 医師は「治療方針のために早く退院を進めたい」
- 看護師は「生活動作が安全にできるまで退院させたくない」
- 理学療法士は「運動機能の改善を優先したい」
こうした優先度のズレは、特に退院カンファレンスや方針会議で顕著になります。
理学療法士の立場としては患者のために最善を尽くしているつもりでも、
他職種から見ると「協調性がない」「自分の意見ばかり通そうとしている」と映ることもあります。
この立場の違いによる摩擦は、本人が悪意を持っていなくても避けづらく、知らぬ間に信頼関係にヒビが入る原因になります。
3. 評価や昇進の基準が曖昧
一般的な企業では、売上や数値目標などの明確な評価基準があります。
しかし、理学療法士の評価は定量化しづらく、評価者の主観に左右されやすいのが現実です。
- 「患者さんからの評判が良い」
- 「他職種との協力姿勢がある」
- 「積極的に勉強会や業務改善に取り組む」
こうした要素は大事ですが、評価基準が人によって違うため、
- 「あの人は上司に気に入られているから昇進した」
- 「実績よりも愛想がいい人が評価されている」
といった不満や嫉妬が職場内に生まれやすくなります。
この不公平感は、人間関係の不信感や派閥を生み、職場全体の雰囲気を悪化させます。
つまり、
理学療法士が人間関係で消耗しやすい背景には、
- 逃げ場の少ない閉鎖的環境
- 価値観の異なる多職種との連携
- 曖昧な評価制度による不公平感
という、職業構造そのものに根ざした要因があります。
この背景を理解しておくことで、「自分の性格が悪いから」「努力が足りないから」といった誤った自己否定を避けることができます。
現場でよくある理学療法士の人間関係摩擦パターン5選


1. 上司との温度差によるすれ違い
理学療法士の世界では、「細かく指示を出す上司」と「自由に任せる上司」が混在します。
問題は、任せるタイプの上司でも心の中では期待や基準があることです。
指示はされていないのに、その基準を満たさないと「何か足りない」と感じられてしまいます。
現場例:
新しい歩行訓練プログラムを考え、意欲的に導入したPTがいました。
上司からは「患者さんの安全面も考えてね」とだけ言われていたため、丁寧に配慮して実施。
しかし後日、「もっとスピード感を持ってやらないと効果が薄い」と批判され、
本人は「じゃあ最初からそう言ってほしかった…」とモチベーションを大きく損ねました。
このような言語化されない期待は、すれ違いの原因になりやすく、積み重なれば信頼関係も崩れていきます。
👥他のあるあるエピソード
- 「もっと患者さんに時間をかけたい」と思っても、上司からは「効率重視で回数をこなすように」と指示される。
- 提案しても「前からこうやってるから」と一蹴される。
❤️心理的背景
上司は全体の業務効率や数字を求められる立場にあり、どうしても現場感より管理側の視点になりがちです。
一方、現場の理学療法士は目の前の患者さんの成果や満足度を優先します。
この価値観の違いが、「自分の想いが理解されない」という不満に繋がります。
❌悪化の連鎖
- 意見が通らない → モチベーション低下
- 距離を取る → 上司からは「協調性がない」と見られる
- 評価にも影響 → さらに不信感が強まる



上司の指示の裏にある「数字・効率・安全性」などの理由を先に理解し、そのうえで「患者さんの利益も守れる折衷案」を提案すると衝突が減ります。
2. 同僚との比較・評価による嫉妬
同じ職場でも、患者に真剣に向き合う人もいれば、「とりあえず仕事を回せればいい」と考える人もいます。
やる気が高い人ほど、温度差のある同僚にストレスを感じやすくなります。
現場例:
患者の自主トレ計画を細かく作り、経過を毎日チェックしていたAさん。
一方、Bさんは「患者の自己責任」という考えで、ほとんど自主トレを確認せず。
結果的に患者の回復差が広がり、患者本人から「Bさんのときはあまり進まない」と不満が出ました。
それでもBさんは「別に俺は困らない」と無関心。
Aさんは不公平感と無力感に苛まれました。
このやる気格差は、努力する側が疲弊していく原因になります。
👥他のあるあるエピソード
- 同期が学会発表や資格取得で評価され、自分は取り残されている気がする。
- 患者さんから「あの人の方が話しやすい」と言われて落ち込む。
❤️心理的背景
理学療法士は評価が数値化しにくく、「誰が優秀か」は上司や患者の主観で決まりがち。
そのため、評価される人=上司に好かれている人という構図が生まれ、嫉妬やモヤモヤが発生します。
❌悪化の連鎖
- 比較して落ち込む
- 意識的・無意識的に相手を避ける
- チーム内の連携に支障が出る



比較をゼロにするのは難しいですが、「評価=一時的な印象」であることを理解し、自分なりの成長指標を持つことが長期的なメンタル安定に繋がります。
3. 他職種との意見の衝突
理学療法士は、医師・看護師・作業療法士など多くの職種と連携します。
しかし、同じ患者でもどの状態をゴールとするかは職種によって異なります。
現場例:
退院支援カンファレンスで、PTは「自宅で安全にトイレ移動できる」をゴールに設定。
一方、看護師は「転倒リスクを完全になくす」を最優先に主張。
結果、リハビリの負荷を下げざるを得ず、患者の機能は停滞。
PTは「やれることをやらせてあげたいのに」と葛藤し、看護師は「安全第一で何が悪いのか」と不満を抱えたまま終わりました。
このゴールのズレは、表面上は穏やかでも水面下でストレスを蓄積させます。
👥他のあるあるエピソード
- 看護師から「もっと生活動作を優先して」と言われるが、こちらは「機能改善を先にしたい」と考えている。
- 医師からは「早く退院させたい」、ケアマネからは「もっと時間をかけて」と相反する要望。
❤️心理的背景
他職種はそれぞれの立場から最善を考えており、必ずしも理学療法士の意見と一致するわけではありません。
特に退院時期や介入内容は価値観の違いが露呈しやすい場面です。
❌悪化の連鎖
- 話し合いが平行線
- 「あの人は頑固」とレッテルを貼られる
- 必要な情報共有が滞る



相手の目的(安全・効率・コストなど)を確認し、その目的を満たしつつ自分の提案も盛り込む「WIN-WIN案」を提示するスキルが有効です。
4. 患者や家族からのクレーム対応します
👥あるあるエピソード
- 家族から「もっとリハビリ時間を増やせないの?」と詰められる。
- 「別の担当に変えてほしい」と言われ、心が折れそうになる。
❤️心理的背景
患者や家族は「改善したい」という切実な思いがあり、それが期待値として理学療法士に向けられます。
しかし、病院の制度や保険の制限で希望に応えられないことも多く、理不尽に責められる形になります。
❌悪化の連鎖
- 落ち込む → 自信を失う
- 積極性が減る → さらに評価が下がる



制度や制限を事前に丁寧に説明し、期待値をコントロールすることで摩擦を未然に防げます。
5. 噂話・陰口の職場文化
👥あるあるエピソード
- 「〇〇さんって最近○○らしいよ」と根拠のない噂が広まる。
- 自分のいないところで悪口を言われている気がして落ち着かない。
❤️心理的背景
閉鎖的な職場では情報が限られ、娯楽の少なさから噂話がコミュニケーションの一部になってしまうことがあります。
これが無意識に人間関係の分断を招きます。
❌悪化の連鎖
- 噂に反応 → 火に油を注ぐ
- 不信感が蔓延 → チームの協力体制が崩れる



噂話には反応せず、事実確認は本人と直接行う姿勢を徹底することで、信頼される立ち位置を確立できます。
【理学療法士の人間関係】摩擦がもたらす負のスパイラル
職場での人間関係の摩擦は、些細なトラブルのように見えても、放置すると心身に大きな負担となり、仕事の質や周囲との関係を悪化させる負の連鎖を生み出します。
理学療法士の現場では、連携ミスや意見のすれ違いが積み重なることでストレスが増し、やがてパフォーマンスの低下や離職の原因となることも少なくありません。
では、この負のスパイラルは具体的にどのように進行していくのでしょうか。
まずは、ストレスの蓄積がどのようにパフォーマンス低下を招くのかを詳しく見ていきましょう。
ストレスの蓄積とパフォーマンス低下
職場での人間関係の摩擦は、表面的なトラブル以上に心の負担となりやすいです。
ちょっとしたすれ違いや情報共有のミスが積み重なることで、ストレスが増え、仕事への集中力ややる気が低下してしまいます。
- ストレスが集中力やモチベーションを奪う
- ミスやコミュニケーション障害が増加する
- 心理的疲労が蓄積し、精神的負担が重くなる



ストレスの蓄積は見えにくいですが、気づかないうちにパフォーマンスを大きく下げてしまうので、早めのケアが必要です。
悪循環のメカニズム
ストレスによる仕事の質の低下は、さらに人間関係の摩擦を悪化させる原因になります。
ミスや遅れが信頼を損ね、職場全体の雰囲気を悪くしてしまう負の連鎖が起きるのです。
- 仕事のパフォーマンス低下が信頼を失う
- 報告や相談の不足がコミュニケーション障害を招く
- 職場全体に悪影響が広がり、連鎖的に摩擦が増える



悪循環は放置するとどんどん深刻化します。小さな問題でも見過ごさず、早めに改善策を講じることが重要です。
離職・転職意向の増加
この負のスパイラルが続くと、精神的な疲労は限界に達し、離職や転職の選択を考える人が増えます。
僕の経験上、こうした状況に追い込まれると、せっかくのキャリアやスキルも活かしきれなくなってしまいます。
- 精神的ストレスが限界を超える
- 退職や転職を検討するようになる
- 組織の人手不足や悪環境化も加速する



離職は本人だけでなく職場全体にも大きな影響があります。だからこそ、早期の気づきと対処で負のスパイラルを断ち切ることが必要です。
【理学療法士の人間関係】摩擦を減らすためのマインドセットと行動5選
理学療法士の現場では、多様な価値観や役割の違いから人間関係の摩擦が起こりやすく、それがストレスの大きな原因となっています。
こうした摩擦をゼロにすることは難しいですが、正しいマインドセットと具体的な行動を意識することで、トラブルを最小限に抑え、より良い職場環境を作り出すことが可能です。
ここでは、現場で実践しやすい「摩擦を減らすためのマインドセット」と、それを支える5つの具体的な行動をご紹介します。
これらを取り入れることで、ストレスが軽減され、信頼関係の土台を築く第一歩となるでしょう。
1. 「期待のすり合わせ」を習慣化する
職場での摩擦の多くは、お互いが無意識に持つ期待のズレから生まれます。
そこで有効なのが、定期的な「期待のすり合わせ」です。
- 新しい取り組みを始めるときは、上司や同僚にゴール像を明確に聞く
- 「これはこういう意図でやっています」と事前に説明する
- 結果が出たあとも「これで合っていますか?」と確認を入れる
この習慣を持つと、「そんなつもりじゃなかった」という不意打ちの批判が減ります。
また、相手からの評価基準が分かることで、自分の行動に自信を持てるようになります。
2. 「温度差」を受け入れた上で、自分の軸を持つ
やる気の温度差は必ずあります。
全員を自分の基準に引き上げようとすると、ほぼ確実に摩擦が増えます。
大切なのは、相手を変えるよりも、自分の軸を明確に持つこと。
軸があれば、温度差があってもブレにくくなります。
行動例:
- 週単位で「自分が達成したい目標」を決め、それを軸に行動する
- 他人の評価よりも「患者の成果」や「自分の成長度」で充実感を測る
- 同僚が緩くても、自分の学びのために研修や読書を続ける



結果的に、自分の姿勢を見た同僚が「やっぱりちゃんとやろうかな」と変わることもあります。
3. 「多職種のゴール」を翻訳する力を身につける
ゴール設定のズレは、翻訳者的な役割を担うことで減らせます。
例えば、看護師が「安全第一」と言ったら、
PTとしては
「安全を確保しながら、筋力低下を防ぐためにこういう負荷をかけたい」と両立案を提示します。
- 会議やカンファレンスで出た意見を、共通の言葉に置き換える
- 「この条件なら双方の意見が成立する」という中間地点を探す
- 一度の話し合いで結論が出なくても、何度か小さく調整する



この「翻訳力」がある人は、自然と信頼され、摩擦の火種も小さくできます。
4. 評価や昇進を「共有の成果」に変える
評価や昇進は、受け手だけが喜んでいると嫉妬を招きやすいです。
そこでおすすめなのが、成果を周囲と共有する姿勢です。
具体例:
- 学んだことや新しい知識をミニ勉強会でシェアする
- 成果が出た患者の経過をチーム全体の取り組みとして報告する
- 「自分だけが特別扱いされている」印象を減らす工夫をする



「この人が評価されたのは自分たちのチームにもプラスだった」
と思わせると、嫉妬が尊敬に変わります。
5. 「患者ファースト」の定義をチームで明文化する
善意同士の押しつけ合いを防ぐには、「患者ファーストとは何か」をチームで共通認識にすることが重要です。
善意同士の押しつけ合いを防ぐには、「患者ファーストとは何か」をチームで共通認識にすることが重要です。
- 患者の安全面と挑戦のバランスをどう取るか
- どこまで自主性を促すか
- 介入時間や頻度の上限下限はどう設定するか



これらを話し合い、紙や共有ツールで明文化しておくと、意見の衝突がぐっと減ります。
特に新しいスタッフが入ったときも、この基準があるとチームの一体感が保たれます。
【理学療法士の人間関係】信頼関係を築くための行動5選


理学療法士の現場では、多職種と連携しながら患者さんのケアを進めるため、円滑なコミュニケーションと信頼関係が欠かせません。
しかし、忙しい日常の中で人間関係に摩擦が生じることも多く、悩みの種になることも少なくありません。
そこで本章では、実際に現場で役立つ「信頼関係を築くための5つの具体的な行動」を紹介します。
小さな心がけが、職場の雰囲気を大きく変え、働きやすさアップにつながるはずです。
小さな感謝を言葉にする
理学療法士の現場は忙しく、患者対応や書類作成に追われていると、つい「ありがとう」を伝える機会を後回しにしてしまいがちです。
しかし、日々の小さな感謝の言葉が職場の雰囲気を大きく変えます。
具体例:
朝のバタバタした時間に同僚が「手伝うよ」と声をかけてくれたとき、ただ頷くだけでなく「助かるよ、ありがとう」と返すだけで相手の気持ちも温かくなります。
また、資料をコピーしてもらった時や、急な患者対応の調整をしてくれた時など、細かいことでも感謝を伝える習慣をつけましょう。
こうした小さなコミュニケーションが積み重なり、「この職場は人間関係が良い」と感じられる環境づくりにつながります。
- 「忙しい中ありがとう」
- 「気にかけてくれて嬉しいです」
- 「フォローしてくれて本当に助かった」
💡大切なポイント
感謝の気持ちは言葉にしなければ伝わりません。忙しい時こそ積極的に「ありがとう」を伝えることで、信頼関係の土台が築けます。
情報共有をこまめに行う
理学療法士の仕事は、多職種連携が基本です。
患者の情報やリハビリの進行状況がチーム内で共有されていないと、誤解やトラブルが生じやすくなります。
例えば、
急に患者の状態が変わったのにそれを伝え忘れてしまうと、次の担当者が戸惑い責任の押し付け合いになることも。
私の経験でも、ある日カンファレンスで「その情報は知らなかった」と言われ、患者ケアにズレが生じたことがありました。
それ以来、日報やチャットツールで「今日のリハの様子」「気になったこと」を必ず共有するようにしています。



これでミスや摩擦は格段に減りました。
- 患者の体調変化はすぐに連絡
- リハの目標や実施状況をチームで確認
- 変更点は口頭だけでなく記録でも残す
💡大切なポイント
情報共有はトラブル防止の基本。信頼できる人は「必要な情報をきちんと伝える人」です。
相手の専門性を尊重する
理学療法士は医師、看護師、OT、ST、介護職など多くの専門職と関わりますが、時に役割や考え方の違いで意見がぶつかることもあります。
そんな時に「相手の専門性を尊重する」姿勢があれば、摩擦はずっと少なくなります。
具体例:
医師から「急ぎの手術予定があるからリハは後回しに」と言われることがあります。
表面上は不満を感じることもありますが、医師の立場や考え方を理解し「患者の安全が第一ですよね」と共感しながら意見交換すると、話し合いがスムーズになります。
また、ST(言語聴覚士)が嚥下(えんげ)リハの専門家としての見解を示したときに、「さすが専門家だな」と認める言葉をかけるだけで、お互いの信頼感が増します。
- 他職種の役割や知識を学ぶ姿勢を持つ
- 相手の意見を遮らず最後まで聞く
- 尊敬の言葉を素直に伝える
💡大切なポイント
専門性を尊重することで相手からも尊重される関係が築けます。違いを否定せず受け入れましょう。
批判より提案を意識する
職場で問題や課題があったとき、「ここが悪い」「なぜこうなるのか」と批判ばかりだと相手は防御的になり、関係が悪化します。
代わりに「こうしたらもっと良くなるのでは?」という提案を添えると、話し合いが建設的になります。
私の職場で、作業負担の偏りが問題になった時、ただ「〇〇さんばかり仕事が多すぎる」と言うのではなく、「週ごとに業務を見直して分担表を作ってはどうでしょうか?」と提案しました。
これがきっかけで実際に話し合いが進み、改善が見られました。
- 問題点だけ指摘しない
- 解決策や改善案を自分なりに考える
- 相手も巻き込んで一緒に考える姿勢を示す
💡大切なポイント
批判は相手を萎縮させるが、提案は協力関係を築くきっかけになる。前向きな言葉を意識しよう。
困ったら早めに相談する
職場の問題や悩みを抱え込むと、精神的な負担が増し、パフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
早めに信頼できる上司や同僚に相談することで、気持ちが楽になり、適切なアドバイスや支援も得られます。
私も新人時代、患者対応で困ったことを一人で抱えてしまい、夜眠れなくなった経験があります。
その後、先輩に相談したことで視野が広がり、解決策が見えました。
今では悩みが大きくなる前にすぐ相談する習慣を心がけています。
- 問題を放置せず早めに話す
- 感情的になる前に冷静に状況説明
- 相談相手は複数持つのがおすすめ
💡大切なポイント
相談は弱さではなく問題解決のための強さ。早期対応がストレス軽減と信頼構築につながる。
【理学療法士の人間関係】自分を守る境界線を引く


理学療法士は責任感が強く、つい「誰にでもすべて応えなければ」と無理をしてしまいがちです。
しかし、そのまま頑張り続けると心身の疲弊につながり、長期的には仕事の質やモチベーションが低下してしまいます。
そこで大切なのが、自分を守るための「境界線(バウンダリー)」を引くこと。
適切な距離感を保ち、できること・できないことを見極めることで、無理なく持続可能な働き方が実現できます。
「全部応えようとしない」勇気
理学療法士は責任感が強く、「何でも引き受けなければ」と思いがちですが、すべてに応えようとすると自分が潰れてしまいます。
自分のキャパシティを正しく把握し、断る勇気を持つことが大切です。
具体例:
急な患者対応の依頼が立て続けに来た時、「今は他の業務が立て込んでいるので、すぐには対応が難しいです」と伝えるのは決して悪いことではありません。
むしろ、無理をしてミスを起こすリスクを減らす賢い判断です。
- 自分の業務量を客観的に把握する
- 必要なら上司に優先順位を相談する
- 断る時も感謝や理由を添えて伝える
💡大切なポイント
断ることは自分を守るために必要なスキル。勇気を持って境界線を引こう。
自己犠牲型からの脱却
「職場のために自分を犠牲にしてもいい」と思うと、燃え尽きや体調不良の原因になります。
健康やプライベートの時間を大切にし、心身のバランスを保つことが結果的に仕事の質向上につながります。
私も忙しい時期に休みを返上して働き続けた結果、体調を崩し1週間ほど休職した経験があります。
その後は無理をせず適切に休息を取ることを最優先にし、効率も上がりました。
- 仕事と私生活の切り替えを意識する
- 定期的にリフレッシュや休息を設ける
- 周囲に自分の状況を伝えて協力を得る
💡大切なポイント
自分を大切にすることは、長く働くための必須条件。自己犠牲を続けない勇気を持とう。
【まとめ】〜なぜ理学療法士は人間関係で消耗しやすいのか?〜


理学療法士の職場では、多くの専門職や患者家族と関わりながら、数値化しづらい成果を求められる中で働くため、人間関係の摩擦やストレスが起こりやすい構造的な背景があります。
暗黙のヒエラルキーや評価の曖昧さ、情報伝達のズレなども重なり、職場で消耗してしまうケースが多いのが現実です。
しかし、だからこそ意識的に行動を変えることで、ストレスの軽減や信頼関係の構築は十分に可能です。
具体的には、
- 日常的に感謝の言葉を伝え、こまめに情報共有する
- 相手の専門性を尊重し、批判ではなく提案を心がける
- 困った時は早めに相談し、自分の限界を理解して無理をしない
といったアクションプランを実践することが重要です。
これらを積み重ねることで、単なる「ストレスのある職場」から「信頼し合い助け合える居場所」へと職場環境が変わり、仕事の質ややりがいも向上します。



結果として、離職や転職のリスクも減り、長く安心して働ける未来が期待できるでしょう。
理学療法士として活躍し続けるために、まずは「人間関係の仕組みを理解し、意識的なコミュニケーション」と「自分を守るための境界線づくり」を今日から取り入れてみてください。